鍼灸師 中川 照久
2022/10/19更新
来院前の3つのポイント
1. 治療費の割引をしていない
初回割引のある治療院は、まず除外しましょう。
割引クーポンありきで治療院を探してしまうと、その時点ですでに実力のある先生と巡り合うことが困難になってしまいます。
本格派の治療院にはウェブサイトすらない場合も多いので、治療費の割引をしている院はまだ成熟していない可能性が高いです。
また、様々な治療コースがあったり、治療時間が選択できるようになっている院はおすすめできません。
症状や疾患によって適切な治療時間は異なるので、初診は一律で二回目以降の適切な治療時間を術者が提案するような形式になっていれば、信用に値します。
患者側に治療内容や治療時間をゆだねているような院は、どちらかというと慰安(リラクゼーション)を目的としている可能性が高いと思います。
また、解決したい症状にもよりますが、基本的には自費の治療を主としている院をお勧めします。
多くの場合、症状の原因は一つではなく、姿勢や栄養状態、生活習慣、元来の体質など、いくつもの要因が絡み合って症状を完成させているので、身体全体を包括的に診てもらう必要があるからです。
鍼灸治療やマッサージも健康保険が適応する場合もありますが、本格的な治療するには保険の範囲内だけでは難しい場合が多いです。
【→良い治療について詳しく】
2. 治療者としての経歴
ウェブサイトのある治療院で、治療者の紹介ページがないというのは少し怪しいです。
また、紹介ページはあっても、治療者の経歴の記載が不十分である場合があります。
治療者としての経歴ではなく、治療者を目指し始めた転機や患者さんへのメッセージ、特技や嗜好、趣味などに終始してしまっているような場合も散見されますが、それは取り立てて記載する実績がない可能性が高いです。
経歴の良し悪しの判断が難しければ、いかに詳細に経歴が記載されているかを判断材料にするのも有効に思えます。
判断が容易なポイントとしては、術者が国家資格を保有しているか否かです。
もちろん、国家資格者でない達人も多数存在しますし、その逆も然りではありますが、ふるい分けの一つの基準にはなり得ます。
3. 休診日・診療時間
良い治療院が休みを取る曜日は、「日曜」と「祝祭日」です。
もちろん、治療院の休診日は立地によって決まっている場合があり、オフィス街にある治療院は週末に休んで、歓楽地や副都心部にある治療院は平日休診というパターンが多いかもしれません。
しかしながら、実力のある治療院の多くは、遠方からも患者さんが通院しているため立地環境に依存しない場合もあるのです。
また、学会やセミナーなどは日曜か祝日に行われることが多いため、定期的に他の専門家と共に研鑽を積んでる先生方は日曜、祝日を休診日にしています。
どれほどの才能や技術を持っている治療者であっても、他の多くの治療者との交流を積極的に取らないでいると、どんどん独りよがりの考えを持つようになり、治療も独善的なものになってしまうことがあります。
熟達者であっても、自身の治療法や技量に常に疑念を持ち、さらなる洗練を目指すことは治療者として終わりのない課題だと思います。
また、診療時間に関しては夜型ではなく、朝型の治療院の方が実力派の院である確率が高いです。
これに関しては理由はよくわかりませんが、本格派の治療院は朝8~9時頃に始まって夕方5~6時頃までのような診療時間であることが多い気がします。
もしかすると、このような院は老舗であり創業当初から診療時間を変更していないのかもしれません。
昔は今に比べると、夜型の治療院は少なかったように思えます。
来院後の3つのポイント
1. 受付専用スタッフがいる
治療院以外でもそうですが、クライアントと治療院の最初の接触は、電話での予約の瞬間であることが多いです。
最近は、ネット予約可能な治療院も多いですが、治療院マニアの中川は、治療院との第一接触も重んじるため、必ず電話で予約します。
少し話が逸れますが、人気も実力も兼ね備えているような院ほど戸口が狭いものです。
ネット予約は今や多くの医療機関でも導入しており珍しいものではありませんが、一流の治療院というのもは、院にたどり着くまでが一種のイニシエーション(通過儀礼)になっているので、電話予約しか受け付けない所も多いのです。
電話での予約時のチェックポイントは、電話対応の良し悪しよりも、受付専門のスタッフがいるか、いないかを見極めましょう。
例え、先生が一人だけの治療院でも繁盛院では、受付のスタッフがいます。
繁盛しているから、腕が良いとは限りませんが、腕の良い先生は必ず繁盛しています。
また、受付スタッフを配置するというのは、人件費を割いてでも、患者様にとって快適な環境を作ろうという患者ファーストの想いの強さでもあります。
2. 次回予約などを強要しない
次回いつ来院できるのかをしつこく聞いてきたり、回数券やサプリメントや枕などの物品を過剰に売ろうとしてくる商魂たくましい治療院には注意が必要です。
商売っ気の強い治療院ほど、症状の改善より患者さんをできるだけ高頻度にたくさん通わせることを目的としている場合が多いからです。
物品の販売自体が悪いわけではありませんが、過剰に勧めてくるような治療院は物販が売り上げの柱になっていて、治療にあまり重きを置いていない可能性もあります。
押し売りをしてくるような悪質な治療院は論外ではありますが、営業的な院はおすすめできません。
3. トイレはすべてを語る
トイレをチェックポイントとするのは、月並みかもしれませんがやはり重要です。
院内の清掃の徹底度合は水回りに出るので、もちろん清潔であることは当然ですが、トイレスペースの広さや設置されている鏡の大きさなども大事なポイントです。
トイレの鏡の大きさというのは、少し変わったチェックポイントですが、来院時には必ず確認してみましょう。
意識の高い治療院はトイレが綺麗というのは言うまでもないことですが、一流の院であればあるほどトイレの鏡は大きいのです。
おしゃれな小さい鏡をトイレに設置するほど、自己満足的な院であることが多いです。
トイレに大きい鏡を設置するということは、当然トイレ自体のスペースが広いというのが絶対条件になります。
トイレのスペースが広いという事は、そもそもテナント自体が広い、もしくは良質なテナントです。
スケルトンの状態からテナントを借りたのだとしたら、トイレの広さの重要性を知っている卓越した経営者と言えます。
治療院を経営されている方はご存じだと思いますが、治療ベッドをいかに効率的に置けるかというのは治療院経営上、大事なポイントです。
その効率性を割くというのは、経営的に中々できることではありません。
そのリスクを取っても大きいトイレスペースでなおかつ、壁いっぱいの鏡。
うむ、これぞ一流の治療院です。
ちなみに付け加えれば、大きい鏡はメンテナンス面でも大変です。
鏡の掃除は思いのほか技術がいるし、なかなか骨の折れる作業なのです。
〝ホンモノ〟とは何か?
最後に、ウナギの話を聞いてください。
2021年7月25日に「情熱大陸」(TBS系)で放送された“鰻の神様”と呼ばれる鰻職人の話です。
放送の中で印象的だったのが、天然の鰻より養殖の鰻の方が脂がのっていて柔らかいので人気だ、という話です。
鰻の業者も市場に合わせて養殖の鰻を育てるので、天然の鰻があまり流通しなくなってしまっているようです。
このように、消費者が求めているものだけを追求してしまうと、本質的なものがどんどん失われてしまう場合があります。
残念ながら、我々の治療業界でも一般大衆にウケの良い売り文句でデタラメな宣伝をして患者を集めて、まともな治療ができないような院が盛業しているようなケースも少なくありません。
治療技術や治療形態が時代や市場に合わせて変化していくのは必ずしも悪いことではありませんが、商業的な目線ばかりを追求してしまうと、治療院の存在意義そのものが希薄になってしまいます。
もちろん、これは治療業界内の先生方の医療者としての倫理観の高さによるものも大きく関係しますが、患者さん一人ひとりが“ホンモノ”の治療院を見極め、見つけ出せるか否かにも関わってきてしまうのです。
より多くの人々が良い治療院を探し出せるということは、その患者さんにとって最善であるだけでなく、業界全体をより良くしていくことにも繋がるのです。
みなさんが良い治療院に巡り合えることを祈念して、筆を置きます。