鍼灸師 中川 照久 2021/1/26更新

このような腰痛には鍼灸治療

症状.1 冷えると痛みが増す

症状.2 足にしびれや違和感がある

症状.3 雨の日や湿気がある日は特に辛い

症状.4 痛む場所が決まっている

症状.5 夜になると痛みが増す

症状.6 痛む場所が移動したり、日によって痛む程度が変わったりする

症状.7 同じ姿勢を続けると腰やお尻あたりが辛くなる

各種腰痛に対する鍼灸治療

腰痛は、鍼灸が効果的な症状の代表であり、当院では腰痛に対して専門的なアプローチが可能です。

上記の症状の鍼灸治療の一例を各症状ごとに解説していきます。

 

症状.1 冷えると痛みが増す

これは、冷え症による血流障害で起こる腰痛です。

体質的な身体の冷えや、外気などの寒冷刺激が原因です。

そのため、筋肉量が少ない方や貧血気味の方に多いタイプと言えます。

入浴などで身体を温めると症状が和らげば、このタイプの腰痛を疑いましょう。

当院での寒冷による腰痛の治療

1. 冷えの根源を治療

人間の身体において冷えの根源となりやすいのは、腹部です。

腹部は、現代人の日常生活の中で最も動きの少ない部位の一つです。

動きが少ないため、体脂肪がつきやすい部位でもありますが、筋肉の稼働が少ない分冷えやすいとも言えます。

また、膝や足首などの関節も冷えを助長しやすいエリアです。

冷えの根源となりやすい腹部や脚の関節付近を灸で熱したり、鍼で優しく刺激して血流を回復させたりすることで温めます。

身体の冷えが解消されるだけで、腰痛が消失することさえあります。

2. 熱を作りやすい体質へ

東洋医学では、肝臓が身体の熱を作り出すと考えられています。

その肝臓の活動が低下すると、身体が冷えて腰が辛くります。

腰痛を起こしやすい体質を変えるために、全身に散りばめられている肝臓のツボをはり治療やお灸でやさしく刺激していきます。

症状.2 足にしびれや違和感がある
症状.3 雨の日や湿気がある日は特に辛い

これらの2つの症状は、東洋医学的に身体の水分をうまく代謝できないと起こる腰痛としてまとめられます。

これを東洋医学では「痰湿」による腰痛と呼びます。

腰やお尻が重く痛むのも、このタイプの腰痛です。

いわゆる「坐骨神経痛」も、東洋医学的にはこのタイプです。

坐骨神経痛のある腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の場合、問題のある場所を特定しやすく治療方針も立てやすいのですが、坐骨神経痛のない腰痛に関しては、全身に対する治療が必要です。

当院での痰湿(たんしつ)による腰痛の治療法

痰湿による腰痛の治療においては、全身のむくみを取り除くことが肝要です。

むくみとは、余分な体液を体外へ排出できないと起こります。

 

身体のむくみは、手先・足先などの末端でも起きやすいので、全身を詳しく評価してから治療していきます。

鍼やお灸で優しく刺激を加えることで血管を拡張させ、余分な体液を血管が回収して体外へ排出しやすくします。

症状.4 痛む場所が決まっている

症状.5 夜になると痛みが増す

これらの2つの症状は、古い血液が血管の中に滞留してしまって起こるタイプの腰痛です。

これを東洋医学では「瘀血(おけつ)」による腰痛と呼びます。

「瘀血」とは東洋医学で、滞留して古くなった血液を指します。

血流は血管が分岐している場所や、流れが曲がりくねっている場所に乱流を起こして、古い血液が滞留する傾向があります。

古い血液の滞留が身体のいたる所で起きてしまうと、身体に不調をきたし、その症状の一つとして現れるのが腰痛です。

このタイプの腰痛は、前項の「痰湿による腰痛」を伴うこともあるので、足の痺れが出る方もいます。

また、女性に多く見られる腰痛で、生理不順や月経痛、月経前症候群(PMS)などの症状を伴う場合が多いと言われています。

当院での瘀血(おけつ)による腰痛の治療法

古い血液が溜まりやすいのは、全身の関節付近や骨盤周りです。

血液の流れは、構造的に複雑な部分に淀みが生じます。

その血流が淀んだ場所に、古い血液が滞留してしまうのです。

脈の打ち方を診たり(脈診)、お腹の硬さを診たり(腹診)、さらに舌の状態を見る(舌診)ことで、古い血液が滞留している場所を特定して治療します。

このタイプの腰痛は個人差があり、治療法を一概に説明することは難しいですが、骨盤周りや肘、足首周辺のツボをはりで治療したり、足首やお腹のツボにお灸をして温めたりする治療を行います。

 

「瘀血」の治療で代表的なツボに「国安流子宮」があります。

下腹部にあるツボですが、教科書上の「子宮」より一寸上方にあります。

李国安という中医師が提唱した名穴です。

この「国安流子宮」は非常に冷えやすいポイントのため、お灸で優しく温めることで「瘀血」が改善し、腰痛が消失します。

 

 

症状.6 痛む場所が移動したり、日によって痛む程度が変わったりする

これは、心理的ストレスによる腰痛と考えられます。

東洋医学では、「気滞(きたい)」による腰痛と呼びます。

気滞とは、心理的ストレスによって気が滞っている病態を指します。

現代社会において、ストレスがない方は、ほとんどいないでしょう。

 

医学的には、心理的なストレスによって身体に不調をきたすことを「心身症」と呼びます。

このタイプの腰痛の方は、全身の倦怠感や疲れやすさ、睡眠障害などを合併していることが多いのが特徴です。

当院での気滞(きたい)による腰痛の治療法

仕事や人間関係、家庭環境による心理的ストレスは、脳にダメージを与え、身体の異常へと繋がります。

また、無意識の身体の緊張が、長期間に渡って存在すると、それが身体へのストレスとなり、結果的に精神へのストレスに繋がる場合もあります。

東洋医学には、「身体こそが、精神をドライブする。」という考え方があります。

これは、どういうことでしょうか。

一般的な感覚として、精神(私たちの意識という意味)がドライバーとして、我々の身体という大きな機体を操縦している、と捉えがちです。

しかし実際には、私たちが操縦している身体からの様々なフィードバックによって、我々の意識、つまり精神の在り様が形作られている、という考え方です。

したがって、身体的な問題を一つずつクリアしていく事によって、精神の乱れを調律し、様々な心理的ストレスを乗り越える為のレジリエンス(精神的耐久力)を治療によって培うことができるのです。

具体的には、頭部や首の筋肉を調整する治療を行います。

病態には個人差が大きいため、詳しく症状や生活環境などを伺った上で、お身体を綿密に調べていく必要があります。

症状.7 同じ姿勢を続けると腰や尻あたりが辛くなる

これは、筋肉や関節の硬さによる腰痛です。

東洋医学では「労倦」による腰痛と呼びます。

これは一番改善しやすく、原因が特定しやすいタイプの腰痛です。

いわゆる西洋医学でいう「筋・筋膜性腰痛」です。

おしりや足に怠さを感じる方も多いです。

当院での労倦による腰痛の治療法

背骨は腰から首まで連続しているので、腰と、後頭骨と頸椎の境界にある「後頭下筋群」も密接な関係があります。

そのため、東洋医学における腰に効果があるとされるツボは、後頭部に多く存在します。

この後頭下筋群の中の頭半棘筋と下頭斜筋は、特にはり治療で刺激を適切に入れやすい筋肉で、腰痛の治療としてとても効果的です。

また、腰の筋肉が硬くなるのは、腰自体が原因というよりも、おしりの筋肉の硬さで骨盤が傾いたり、太ももの筋肉が骨盤を引っ張って傾いたりして、腰に負担がかかっているのが原因ということも多いのです。

そのため、おしりや太ももへはり治療を行うと効果が上がるこがあります。

当院では、自宅で出来るストレッチなども指導しています。是非ご相談下さい。