鍼灸師 中川 照久
2020/8/8更新
残心(ざんしん)とは?
心を残すと書いて、残心。
残心とは、剣道などの武道や茶道などの芸道において使われる概念です。
武道や芸道の一連の所作を行う上で、所作の終わりにも注意を払うことを、「残心」と言います。
やりっぱなしではなく、「一連の動作の終わりにも心を残せ」ということです。
例えば、茶道においてはお茶を客人に振る舞うということを雄弁な媒介として、客人に「おもてなしの心」を伝えることが重要です。
我々の心は目に見えないからこそ、目に見えるものを介して、その有り様を伝える事が時として非常に大切なのです。
心と体は、表裏一体
体調が優れない時や、気になる症状がある時は頭の働きも鈍ります。
また、精神的なストレスに押しつぶされてしまうと、身体に影響を及ぼし、時に耐えがたい症状を生み出してしまいます。
それだけ身体と心、すなわち人間の体と意識は密接に繋がっているのです。
気を病むのが、病気
私が卒業した鍼灸学校は、国家試験の合格率に並々ならぬ執念を持っており、「国家試験の神様」と呼ばれていた鍼灸教員がいました。
その先生は私たちに国家試験を臨むに当たっての心構えについてを教えてくれました。
「本番での体調は、その人間の本気度に比例する。」
国家試験に限らず、入学試験や部活の試合、大事なプレゼンなど実力を最大限に発揮したい場面では、体調の管理は何においても重要である事は言うまでもありません。
その体調管理において一番重要なものが、「本番にかける気持ち」だということです。
まるで古典的な精神論のように聞こえますが、その人の気位は確実にその人の身体の状態に否応なく反映します。
身体だけではなく、「気(気持ち)」が病に冒されることで「病気」が完成してしまうのです。
身体が精神をドライブする
物事を良い方向への好循環に乗せることを「ドライブする」と言います。
私たち治療家は、患者さんの身体だけではなく精神、すなわち意識もドライブすることを目的としています。
鍼灸治療では身体への刺激によって、身体的変化はもちろん、脳機能も高めることで精神面にもアクセスすることができるのです。
筋肉や骨格だけではなく、臓器の働きや脳機能のパフォーマンスも最大化できてこそ、真の鍼灸治療であると私は考えています。
鍼灸が人生をドライブする
当室には整形外科系の疾患の方がたくさんいらっしゃいます。
しかし、その中の多くの方は単に筋肉や関節だけが原因だとは思えません。
多くの方は、自覚、無自覚に関わらず精神的なストレスを抱えています。
そのような方は、身体だけを治療しても中々良くならなかったり、一時的に回復してもすぐに再発してしまいます。
鍼の刺激はエンドルフィンという快楽物質の放出を促します。
その快楽物質が疲れた脳を癒し、効率的な休息を与えることで脳機能を高めるのです。
現代人は、脳を酷使する環境で生活している方がほとんどです。
頭を使うのは良いことですが、質の良い休息を与えなければ疲弊し、その機能を落としてしまいます。
心身をドライブする治療は、あなたの意識も好転させます。
そして、その意識はあなたの人生をより良いものに変えていくはずである、と私は確信しています。
1人でも多くの方の人生をドライブできるよう、私たちは日々研鑽を積んでおります。