灸師 中川 照久

2022/11/5更新

 

お灸とは?

もぐさ

灸の治療はモグサを燃焼させることで生まれる温熱刺激とモグサの薬効を利用した治療法です。

モグサとは、ヨモギの葉の裏側に生えている腺毛という白い産毛を乾燥させて、さらに不純物を取り除き、精製されたものです。

ヨモギの腺毛の油分にはシネオールという成分が多く含まれており、このシネオールが薬効を高める役割を担っていると考えられています。

当院では世界最高品質の国産もぐさを使用した灸治療を行います。

 

お灸の主な効果

1.免疫力の向上

免疫力向上

灸は、患部に白血球を集め、さらに抗体(白血球が使う武器)や補体(標的につけるしるし)も併せて呼び寄せるため、白血球の食作用や抗菌作用を強めること(オプソニン効果)で免疫作用を高めます。

適応症:扁桃腺炎、外傷、火傷、デキモノ、急性上気道炎(風邪)、結核、下痢

2.自律神経の正常化

自律神経

灸は、モグサを燃焼させるため、徐々に熱量が増して、徐々に熱が冷めていきます。すると、熱量の増加に合わせて、局所の血管は徐々に拡張し、その後ゆっくりと時間をかけて収縮していきます。このように、熱刺激で血管に働きかけて、血管の運動性を高めると、血管を動かしている自律神経が本来の働きを思い出して、正常に機能するようになります。

適応症:心臓神経症、各種恐怖症、不安症、自律神経失調症

3.抗アレルギー作用

アレルギー

灸は、過剰反応を起こす免疫細胞を鎮静化してアレルギー反応を抑えます。

適応症:喘息、皮膚炎、食物アレルギー

4.血液循環の改善と血液の質の向上

赤血球

灸の温熱刺激で、血液循環が悪い場所の血管を拡張させることで、局所に溜まっていた老廃物などが血管に回収されやすくなり、むくみが解消します。

また、モグサは、赤血球の造成を促し血液中の酸素量を高めたり、血液中の酸化を防いだり(抗酸化作用)、血液中の毒素を発汗や排尿により排出しやすくしたりするため、血液の質が向上します。

5.細胞の機能亢進作用

神経細胞

機能不全を起こしている細胞を鼓舞して機能を亢進させます。

6.強心作用

心臓の痛み

温熱刺激で血管の運動性が高まると、血管が血液を循環させやすくなります。すると、心臓の負担が減り、心機能が高まります。

7.止血作用

血小板

モグサは傷に対し、血小板を傷口に集め、血液凝固を促進し、止血を早める作用があります。

 

8.神経伝達の調整

神経細胞

興奮している神経細胞を鎮静化させたり、弱っている神経細胞を興奮させたりすることで神経伝達を調整します。

 

9.消炎作用

消火

患部に過剰に集中した炎症細胞を適度に分散させて、患部の痛みを抑えつつ治癒を促進します。

 

お灸の雑学

「ツボ」とは、お灸を据える場所

東洋医学におけるツボは、一般的な鍼灸古典書において場所だけが表記される場合が多く、鍼で刺すべき深度や方向、または指で押す強さや方向が記されていないことから、元来はお灸を据える場所を指しているのではないかという説もあります。

 

お灸の専門用語「焼き切り」と「あと効き」

国内でのお灸は、治療に使われていただけでなく、お寺や家庭でも親しまれてきました。

そのため、民間で広まった様々な言い伝えがあり、代表的なものが「焼き切り」「あと効き」です。

灸治療イラスト

「焼き切り」

「焼き切り」とは、病気の根源を断ってしまうという意味です。

お灸の治療を反復的に受けると、血液がめぐりにくいポイントの血管が新しく再生して、血液がすみずみまで行き渡るようになります。

すると、症状が再発しにくくなると言われており、これを「灸の焼き切り」と言ったそうです。

 

「あと効き」

灸イラスト

「あと効き」とは、お灸の治療を受けた直後よりも、数時間後かもしくは治療の翌日に症状が軽快することを言います。

灸を受けるべき回数

梵鐘・除夜の鐘

この「焼き切り」と「あと効き」は、ある程度継続的にきゅう治療を受けた人だけに現れる効用ともいわれており、その回数にも諸説あります。

 

治療の回数の目安として有名なものは、煩悩の数である108日間と言われています。

灸と仏教

日本のきゅう治療は仏教と同時期に中国から伝来しているため、お坊さんがきゅう治療をしていた歴史があります。

 

そのため、日本ではきゅう治療と仏教の関係がとりわけ深いのかもしれません。

しかし、専門的な知識と技術を持たない者が行うと事故の危険性が高いため、現在では、お灸の治療を行えるのは、医師きゅう師に限られています。