「ツボって何ですか?」という質問をこれまで何度となく頂いてきました。
「‟ツボ”とは、果たしてどのようなものなのか?」に関しての詳細な定義は、治療家によっても微妙に解釈が異なると思います。
ウェブ上で「ツボ」について検索してみると、様々な先生方がツボというものを説明しています。
その中で、「ツボ=経穴(けいけつ)」と説明しているサイトが多かったことですが、正確には間違いです。
「経穴(けいけつ)」とは何か?
経穴とは、経脈(けいみゃく)という道の走行上にあるツボを指します。
経脈とは、気(エネルギー)と血(血液)が流れる経路のことです。
この経脈は、地下鉄の路線のように体表から少しもぐった所をタテ方向に走っていて、人間の身体には14の経脈があるとされています。
東洋医学では、この14の経脈が潤滑に運行することによって、人間の身体のすみずみまでエネルギーや栄養が送り届けられている、と考えられています。
そのため、この経脈の流れが悪くなってしまうと、気の流れが悪くなり病に侵されるとされています。
経脈の流れを地下鉄の路線に例えると、運行状況を管理する駅(管理センター)が走行上にあり、何か経脈の運行に乱れが生じると、その情報が最寄りの駅(管理センター)に届けられるという仕組みになっています。
そして、この駅(管理センター)のことを「経穴(けいけつ)」と呼ぶのです。
「穴(けつ)」というのはツボを意味するので、経脈上にあるツボ(穴)で「経穴」なのです。
ちなみに、この経穴は全14の経脈の上に361穴あるとされています。
「奇穴(きけつ)」とは何か?
しかし、実際にはこの経穴の他にも、二種類のツボがあります。
その一つが「奇穴」です。
「奇穴」は、“奇妙”なツボ(穴)という意味です。
なぜ、奇妙なのか?
それは、気の流れ(経脈)の走行上にないに効果があるから”奇妙”というわけです。
奇穴は、「特効穴(とっこうけつ)」とも呼ばれ、WHO(世界保健機関)が定めたものは48穴存在します。
この奇穴は、特定の疾患に対してよく効くツボとして治療の現場でよく使われます。
臨床的に特に効果のあるポイントが新たにツボとして認められる場合があります。
このようなツボを「新穴(しんけつ)」と呼びますが、新穴も奇穴に分類されます。
「阿是穴(あぜけつ)」とは何か?
三種類目のツボは、「阿是穴(あぜけつ)」です。
「阿是」とは、「あ~ソコソコ!」という意味です。
つまり、押された時に「効いてる!」と感じるポイントを阿是穴と言います。
いわゆる「圧痛点」や「トリガーポイント」の概念とも似ています。
「ツボ=経穴」ではない。
つまり、経穴、奇穴、阿是穴の三種類をまとめてツボと呼んでいます。
さらに言えば、ツボは学問上は「腧穴(しゅけつ」と言います。
「ツボ=腧穴」というわけです。
ツボという表現がいつの時代から存在していたのかは分かりませんが、「ツボ(壺)=あな(穴)」という連想から大切なものが隠れている場所を意味し、人間の身体の要所は触察すると少しへこんで感じられることから、そう呼ばれるようになったのかもしれません。
「鍼灸師=ツボ師」?
身体に異常が起こると、その情報はツボに送られて、その場所は処置を求めるポイントとして体表に現れます。
そのツボを探し出して、適切な処置を施すのが鍼灸師の仕事です。
現在の日本で、制度上「ツボ」を学問として正式に履修するのは鍼灸師だけです。
按摩マッサージ指圧師もツボを履修しますが、鍼灸師ほど詳細には学びません。
ツボという不思議な学問には、国家資格があるのです。
つまり、「鍼灸師=ツボ師」とも言えるでしょう。
鍼灸師の中には東洋医学的な見方をせず、西洋医学をベースに治療をする先生もいらっしゃると思いますが、解剖学的なポイントもいわゆるツボと言えると思います。
ツボに興味を持たれた方は、ぜひ鍼灸師にお尋ねください。