鍼灸はいつから存在する?

鍼灸治療と言えば、中国起源のイメージが強いですが、ツボを使った治療法は古代からヨーロッパでも行われていたようです。

鍼の起源を語る時に、よく持ち出されるのは中部ヨーロッパで発見されたアイスマンについての話です。

 

1991年、ドイツ人夫婦のヘルムート・ジーモンとエリカ・ジーモンは、アルプスにあるエッツ渓谷(イタリアとオーストリアの国境付近)の氷河を渡っていた際に、凍った遺体を発見しました。

その一帯は、多くの人が命を落とす危険なエリアだったため、二人は現代人の遺体だと考えたそうです。

しかし、その遺体はなんと約5300年前の遺体でした。

その遺体は、発見された場所にちなみ「アイスマン・エッツィー」と名付けられました。

エッツィーは、冷凍状態だったため、驚くほど保存状態が良く、瞬く間に世界的に有名になりました。

間もなく科学者たちがエッツィーの調査を始めると、さらに驚くことが発見されたのです。

エッツィーの体のいたるところに、刺青があり、点を線でつないだような絵が描かれていました。

そして、その点の80%は現代の経穴に一致していたのです。

使われたツボは、胃兪・三焦愈・腎愈・崑崙などでドイツ鍼耳介治療学校のフランクバール医師は、腰痛と腹部の疾患を治療したものではないか、と考えました。

すると、放射線を用いた調査から、エッツィーの腰椎には関節炎があり、腸には鞭虫(べんちゅう)の卵が多数発見されたのです。

高い確率で、エッツィーは約5300年前に腰痛と腸の不調に悩まされていたことでしょう。

 

しかし、中国人たちが主張する伝説によれば、紀元前2600年に戦争に参加した兵士に矢が刺さった時に発見されたとされています。

矢が刺さった傷は致命傷にならなかったばかりか、患っていた病気が治ってしまったそうです。

 

鍼灸が理論として体系化されたのは、それからずっと後のことで、最初の理論体系として知られているのが、紀元前200年頃に成立した『黄帝内経』という書物で、現存する最古の医学書として2011年にユネスコ世界遺産に登録されています。

 

 

日本ではいつから行われていた?

日本に本格的な鍼灸関連の教本や技術が正式に伝来したのは、7世紀の飛鳥時代とされています。

中国に留学した遣隋使や遣唐使が日本に持ち帰り、その後701年には大宝律令によって法制化もなされました。

 

しかし、4世紀~5世紀頃にも海を渡って日本を訪れた大陸の医学者は存在したようです。

 

4、5世紀というと日本はヤマト王権時代です。

その時代に実在したとされる第19代天皇の允恭(いんぎょう)天皇が新羅(しらぎ)からの名医を招聘した記録が残っています。

新羅は朝鮮半島の大半を占領していたので、その名医は韓医師の祖先ということになるのでしょうか。

あまり知られていませんが、韓国では現在でも中国に勝るとも劣らない伝統医学の発展がみられます。

 

大陸から輸入された医学の体系は、日本国内において独自の進化を遂げ、15世紀ごろから漢方医学として広く根付いていきます。

朝鮮半島を舞台にした16世紀における世界最大の国際戦争として名高い「文禄の役(1592年)」で豊臣軍は、李氏朝鮮から大量の医学書籍を略奪したのです。

その量は、数千冊、船で数艘分を要したと言われており、その後の日本での鍼灸治療の発展に一役かっていることでしょう。
秀吉はこの他にも、九州征伐のおりに鍼灸師団を帯同させるなど、鍼灸の歴史に何かとかかわりの深い人物の一人です。

 

日本の鍼灸治療は、江戸時代にさらに発展を遂げたとされています。
特に、徳川五代将軍・綱吉の侍医であった鍼灸師・杉山和一は、「管鍼法」という管を使用した日本独自の鍼灸技法を生み出し、現在ではこの方法がグローバル・スタンダードになりました。

 

江戸時代に発展を遂げた鍼灸治療も幕末から明治初期にかけて、徐々に西欧医学に医療の主導権を取られてしまいます。

しかし、時代の波に飲まれそうになりながらも、明治天皇や漢方医・和田啓十郎氏など漢来医学を愛した人々によって、何とか再興を果たしました。

当院の所在地である、この東京・日本橋は、漢来医学復興の地とされており、日本橋浜町には石碑も設置されています。

 

鍼灸の歴史は連続していない?

鍼灸治療は、大昔から存在していたようではありますが、その歴史は連続しているわけではありません。

何千年という歴史の中で、脈々とその技法や理論体系が受け継がれてきたわけではなく、各時代で消えかかりながらも何とか再興を果たして、細々と受け継がれてきたものなのです。

 

したがって、鍼灸治療は何千年の間に常にアップデートされてきたわけではないのです。

その時代に応じて盛衰はあったものの、決定的な飛躍は今後起こるものと考えられます。

 

現在では、東京大学病院や北里大学病院の東洋医学研究所、東京女子医科大学などの大学病院も大々的に鍼灸治療を取り入れています。

街中のクリニックにおいても、整形外科だけでなく心療内科や脳神経内科などが鍼灸治療を取り入れている所が少なくありません。

将来的にはますます、鍼灸医学と西洋医学を合わせた統合医療が実現していくことでしょう。

 

これからの先の数十年で、医学は我々の想像を超えるほどの飛躍的な進歩を遂げることになりそうです。

その中で、自然療法である鍼灸治療がより見直されることを、私は確信しています。

 

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