鍼灸師 中川 照久
2024/11/22更新
治療院選びの前提
自分にあった良い治療院になかなか巡り合えないという方は、存外多いのではないかと思います。
世の中に実力のある先生は大勢いらっしゃるのに、なぜなかなか良い治療院に巡り合えないのでしょうか。
その理由は、まず一人の治療者が対応できる患者数の上限があり、人気の先生はすでに新規患者の受け入れをやめてしまっているケースは多が少なくありません。
また、本当に人気のある治療院はウェブサイトを有していないなど、広告をしていない場合があるため、運良く知人などの紹介がないとたどり着けないといった理由もあります。
さらに、実力のある先生に巡り会えたとしても、
つまり、それらの理由からそもそもの前提として、
そこで、
私は、治療者でありながら学生時代から様々な治療院を巡り、
しかしながら、この5つのポイントを満たしていても、
治療院選びの5つのポイント
1. 治療費の割引をしていない
初回割引のある治療院は、まず除外しましょう。
ポータルサイトなどで割引クーポンありきで治療院を探してしまうと、その時点ですでに実力のある先生と巡り合うことが困難になってしまいます。
良い治療院を探し続けている人は世に多いので、実力のある治療院は口コミだけでも予約枠がすぐ埋まってしまうため、広告の必要がありません。そのため、本当の人気治療院はウェブサイトすら有してない場合も多いのです。
治療費の割引をして新規患者を積極的に受け入れている院は、先生が複数人いて当たり外れが激しいか、治療を途中でやめてしまう来院者が多いなどの可能性があります。
また、治療費が高ければその分信頼性が高いというわけではありませんが、物価が高騰している昨今の現状で相場より安価な治療院は診療の実力もそれなりである場合も多いような気がします。
2. 時間制の治療ではない
様々な治療コースがあったり、治療時間が選択できるようになっている院はおすすめできません。
症状や疾患、もしくは患者さんの状態によって適切な治療時間は異なるので、適切な治療時間は治療者が判断し提案するような形式になっていれば、信用に値します。
治療内容や治療時間を患者側に委ねているような院は、どちらかというと慰安(リラクゼーション)を目的としている可能性が高いです。
治療時間について、もうすこし深掘りすると、実は
【→良い治療について詳しく】
3. 完全自費である
解決したい症状にもよりますが、慢性的な疾患や症状であれば、基本的には自費の治療を主としている院をお勧めします。
慢性症状の多くは、症状が原因は単一ではなく、生活環境や睡眠状態、食習慣、脳疲労など、いくつもの要因が絡み合って症状を完成させているので、包括的に心身の状態を診てもらう必要があります。
鍼灸治療やマッサージも健康保険が適応する場合もありますが、本質的な治療するためには保険の範囲内だけでは難しい場合が多いです。
また、実力のある院では完全に自費診療であることが多いのが実際の所です。
近年では、医科や歯科医院などでも自費治療を主体で実践しているクリニックが実績を上げているケースは枚挙にいとまがありません。
4. 治療者としての経歴
ウェブサイトのある治療院で、治療者の紹介ページがないというのは少し怪しいです。
また、紹介ページはあっても、治療者の経歴の記載が不十分である場合があまりに多く見受けられます。
治療者としての経歴ではなく、治療家を目指し始めた転機や患者さんへのメッセージ、特技や嗜好、趣味などに終始してしまっているような場合も散見されますが、それは取り立てて記載する実績がない可能性が高いです。
経歴の良し悪しの判断が難しければ、いかに詳細に経歴が記載されているかを判断材料にするのも有効に思えます。
判断が一番容易なポイントとしては、術者が国家資格を保有しているか否かです。
もちろん、国家資格者でない達人も多数存在しますし、その逆も然りではありますが、一つのスクリーニングにはなり得ます。
勉強熱心な先生の多くは、その技術を直接的に臨床に使用していない場合でも医療系の国家資格を有している場合があります。
5. 休診日・診療時間
良い治療院が休みを取る曜日は、「日曜」と「祝祭日」です。
もちろん、治療院の休診日は立地によって決まっている場合があり、オフィス街にある治療院は週末に休んで、歓楽地や副都心部にある治療院は平日休診というパターンが多いかもしれません。
しかしながら、実力のある治療院の多くは、遠方からも患者さんが通院しているため立地環境に依存しない場合もあるのです。
また、学会やセミナーなどは日曜か祝日に行われることが多いため、定期的に他の専門家と共に研鑽を積んでる先生方は日曜、祝日を休診日にしています。
どれほどの才能や技術を持っている治療者であっても、他の多くの治療者との交流を積極的に取らないでいると、どんどん独りよがりの考えを持つようになり、治療も独善的なものになってしまうことがあります。
熟達者であっても、自身の治療法や技量に常に疑念を持ち、さらなる洗練を目指すことは治療者として終わりのない課題だと思います。
また、診療時間に関しては夜型ではなく、朝型の治療院の方が実力派の院である確率が高いです。
これに関しては理由はよくわかりませんが、本格派の治療院は朝8~9時頃に始まって夕方5~6時頃までのような診療時間であることが多い気がします。
もしかすると、このような院は老舗であり創業当初から診療時間を変更していないのかもしれません。
昔は今に比べると、夜型の治療院は少なかったように思えます。
〝ホンモノ〟とは何か?
最後に、ウナギの話を聞いてください。
2021年7月25日に「情熱大陸」(TBS系)で放送された“鰻の神様”と呼ばれる鰻職人の話です。
放送の中で印象的だったのが、天然の鰻より養殖の鰻の方が脂がのっていて柔らかいので人気だ、という話です。
鰻の業者も市場に合わせて養殖の鰻を育てるので、天然の鰻があまり流通しなくなってしまっているようです。
このように、消費者が求めているものだけを追求してしまうと、本質的なものがどんどん失われてしまう場合があります。
残念ながら、我々の治療業界でも一般大衆にウケの良い売り文句でデタラメな宣伝をして患者を集めて、まともな治療ができないような院が盛業しているようなケースも少なくありません。
治療技術や治療形態が時代や市場に合わせて変化していくのは必ずしも悪いことではありませんが、商業的な目線ばかりを追求してしまうと、治療院の存在意義そのものが希薄になってしまいます。
もちろん、これは治療業界内の先生方の医療者としての倫理観の高さによるものも大きく関係しますが、患者さん一人ひとりが“ホンモノ”の治療院を見極め、見つけ出せるか否かにも関わってきてしまうのです。
より多くの人々が良い治療院を探し出せるということは、その患者さんにとって最善であるだけでなく、業界全体をより良くしていくことにも繋がるのです。
みなさんが良い治療院に巡り合えることを祈念して、筆を置きます。