長く休んでも疲れが抜けない。
少し動いただけなのに、翌日から数日、あるいはそれ以上つらくなる。
眠っても回復した感じがしない。
頭に霧がかかったように、考えることや会話が重い。

そのような状態が続いているなら、単なる「疲れ」ではなく、慢性疲労症候群(ME/CFS)という病態も視野に入ります。
慢性疲労症候群は、長期間続く強い疲労、活動後の悪化、熟眠感のなさ、思考力や集中力の低下などを特徴とする、日常生活に大きな影響を与える疾患です。

当院では、慢性疲労症候群に対して、「無理に元気にさせる」のではなく、悪化しやすい身体をこれ以上追い込まないことを重視します。
強い刺激や過剰な負荷を避けながら、睡眠、頭の重さ、首肩の緊張、頭痛、全身の張り感、神経の高ぶりといったつらさを少しずつ整え、日常生活を立て直していくための鍼灸を行います。

慢性疲労症候群(ME/CFS)とは?

慢性疲労症候群(ME/CFS)は、半年以上続く強い疲労に加えて、少しの身体活動や頭の使いすぎのあとに症状が悪化すること(労作後の消耗・PEM)、眠っても回復しない睡眠、ブレインフォグ(思考力・集中力の低下)などを特徴とする病気です。
立っているだけでつらい、ふらつく、光や音に敏感になる、頭痛・筋肉痛・関節痛が出るなど、症状は人によって大きく異なります。

この病気は、血液検査や画像検査で典型的な異常が出ないことも多く、他の病気ではないことを確認しながら診断していく必要があります。
実際、NICE(英国国立医療技術評価機構)やCDC(米国疾病対策センター)でも、慢性疲労症候群は単一の検査で確定する病気ではなく、症状の経過と除外診断が重要だとされています。

こんな症状はありませんか?

✔ 休んでも疲れが抜けず、朝からすでに消耗している
✔ 少し出かけただけで、翌日から寝込む
✔ 仕事、家事、入浴、買い物のあとに強く悪化する
✔ 頭が回らない、言葉が出にくい、集中できない
✔ 眠っても眠っても回復感がない
✔ 立っているのがつらい、ふらつく、動悸が出る
✔ 頭痛、首こり、肩こり、筋肉痛、関節痛が続く
✔ 光、音、におい、人混みなどの刺激に弱くなった

こうした症状の組み合わせは、慢性疲労症候群でみられることがあります。

特に「動いたあとに遅れて悪化する」という特徴は、ただの疲労と見分けるうえで大切です。

症状は12〜48時間ほど遅れて強くなり、数日から数週間続くこともあります。

慢性疲労症候群の診断で大切なこと

慢性疲労症候群(ME/CFS)は、「慢性的に疲れている人」すべてが当てはまる病気ではありません。
貧血、甲状腺機能異常、炎症性疾患、糖代謝異常、肝機能障害、睡眠障害など、疲労感の原因になりうる病気を確認することがまず大切です。
NICE(英国国立医療技術評価機構)でも、尿検査、血算、電解質、肝機能、甲状腺、炎症反応、HbA1c、フェリチンなどを例に挙げ、他疾患の除外を重視しています。

そのため、当院では「慢性疲労症候群と診断されている方」はもちろん、「検査で異常なしと言われたが、症状が典型的で疑いがある方」にも対応しますが、専門医院での評価を受けながら進めることを大切にしています。

なぜ症状が長引くのか?

慢性疲労症候群は、原因がひとつに決まっている病気ではありません。
現在も病態の研究が続いており、免疫、神経、自律神経、睡眠、認知機能、起立不耐など、複数の問題が重なっていると考えられています。
NCNP(国立精神・神経医療研究センター)でも、慢性疲労症候群は労作後の強い悪化、睡眠障害、高次脳機能障害、自律神経障害などを伴う難治性疾患として説明されています。

つまり、慢性疲労症候群は「ただ体力が落ちているだけ」「気のせい」「運動不足だから」と単純に片づけられるものではありません。
むしろ、負荷のかけ方を間違えると悪化しやすい病態です。
NCNP(国立精神・神経医療研究センター)は、慢性疲労症候群を治す目的での一律な運動増量や、固定的に活動量を上げていくプログラム(段階的運動療法)を勧めていません。

当院の鍼灸治療の考え方

当院が目指すのは、慢性疲労症候群そのものを「治る」と言い切ることではありません。
慢性疲労症候群には現時点で確立した根治療法がなく、活動量の調整や対症療法が中心です。
だからこそ、鍼灸も「無理やり上向かせる治療」ではなく、悪化を避けながら、少しでも生活しやすい状態へ寄せる補助的な治療として位置づけます。

慢性疲労症候群では、刺激への過敏性や、触れられるだけでも消耗するタイプの方もいます。
NICE(英国国立医療技術評価機構)でも、重症例では光・音・におい・触圧への過敏さに配慮する必要が示されています。
そこで当院では、毎回強く効かせることよりも、刺激量を絞り、施術後に崩れにくいことを重視します。

当院の慢性疲労症候群に対する鍼灸治療

慢性疲労症候群(ME/CFS)の方に対しては、次のような点をみながら治療を組み立てます。

1.首・肩・背中の緊張をほどき、神経の高ぶりを下げる

疲労が強い方ほど、首肩や背中が過緊張になっていることが多く、頭の重さや睡眠の浅さ、息のしづらさ、頭痛の背景になることがあります。局所を強く揉むのではなく、必要最小限の刺激で全体の緊張を下げていきます。

2.睡眠の質を整える

慢性疲労症候群では、長く眠っても回復感がない「熟眠感のなさ」が重要な症状です。
寝つき、途中覚醒、朝の消耗感を確認しながら、身体が休まりやすい状態を目指します。
熟眠感のなさは慢性疲労症候群の中核症状のひとつです。

3.頭の重さ・ブレインフォグを悪化させる要因を減らす

ブレインフォグは、言葉が出にくい、考えがまとまらない、反応が遅くなる、といった形で現れます。
慢性疲労症候群では認知機能の低下が主要症状のひとつとされています。
頭部、首まわり、呼吸、全身の緊張を評価しながら治療します。

4.施術後に悪化しない範囲を考える

慢性疲労症候群では、少しの負荷でもあとから大きく崩れることがあります。
NICE(英国国立医療技術評価機構)やCDC(米国疾病対策センター)でも、活動後の悪化は数時間〜数日遅れて出て、回復に長くかかることがあるとされています。

そのため当院では、毎回の治療での刺激を入れすぎないようにしています。

鍼灸で期待すること、期待しすぎないこと

鍼灸に期待するのは、主に次のような部分です。

✔ 眠りの浅さ、寝ても回復しない感じの軽減
✔ 頭痛、首こり、肩こり、筋肉の張りの軽減
✔ 神経の高ぶり感、落ち着かなさの軽減
✔ 日常生活での消耗のしやすさを下げること
✔ 「少しマシな日」を増やしていくこと

一方で、鍼灸だけで慢性疲労症候群の病態そのものを確実に改善できる、とまでは言えません。

慢性疲労や慢性疲労症候群に対する鍼治療については、疲労感の軽減や生活の質(QOL)の改善に役立つ可能性を示す研究も報告されています。
しかし、研究の規模や方法にばらつきがあり、現時点では確定的な結論には至っていないとされています。

また、慢性疲労症候群の患者を対象に、複数の医療機関で行われたランダム化比較試験では、通常の治療に加えて4週間の鍼治療を行った群で、疲労指標の改善が認められたという報告もあります。

さらに、日本国内の研究でも、慢性疲労を対象にしたランダム化比較試験において、主観的な疲労感の改善が示されています。

ただし、これらの結果は、鍼灸が慢性疲労症候群の確立された治療法であることを示すものではありません。
あくまで症状緩和を目的とした補助的な選択肢のひとつとして考える必要があります。

よくある質問

Q.慢性疲労症候群は、ただの疲れとは違うのですか?

違います。

慢性疲労症候群では、活動量の低下を伴う強い疲労が長く続き、休んでも回復しにくく、活動後に悪化し、熟眠感のなさやブレインフォグを伴うのが特徴です。

Q.運動した方が早く治りますか?

一律には言えません。

慢性疲労症候群では、運動や活動の増やし方を間違えると悪化することがあります。

NICE(英国国立医療技術評価機構)は、固定的に活動量を増やしていくプログラムを勧めていません。

Q.鍼灸だけで治りますか?

鍼灸は補助的な位置づけです。

慢性疲労症候群には現時点で確立した根治療法がなく、鍼灸についても改善の可能性は示されている一方、研究の質には限界があります。

Q.どんな治療をされますか?

当院では、身体が受け止められる範囲の刺激量を考え、睡眠、頭痛、首肩の緊張、全身の張り、神経の高ぶりを整える治療を行います。