鍼灸師 中川 照久

2021/1/6更新

国家資格は4種類

国内には、実に様々な治療院があります。

整骨院や整体院を筆頭に、指圧院やマッサージ店、鍼灸院など多種多様なジャンルに分かれていて、治療院を探していてもどこに行ったら良いのかの判断が難しいと思います。

 

鍼灸整体師

ちまたでは「整体」という言葉が市民権を得ているようですが、整体には明確な定義はありません。

整体は法制化されていないため、だれでも整体師を名乗ることができます。

日本国内の治療業で国家資格化されているものは以下の四つだけです。

  1. 按摩マッサージ指圧師
  2. 柔道整復師
  3. はり師
  4. きゅう師

それぞれ説明していきます。

1. あん摩マッサージ指圧師

按摩マッサージ指圧師

一つ目は、あん摩マッサージ指圧師です。

こちらはいわゆるマッサージ師です。

あん摩とは中国で生まれたの手技療法で、指圧は日本式のやり方です。

有名な指圧師に浪越徳次郎という先生がいます。

ご存じの方も多いと思います。

また、マッサージとは正確にはヨーロッパ式を指します。

本当のマッサージは素肌にじかに治療することが多く、オイルも使うので、日本で言うところのオイルマッサージやアロママッサージが本来のマッサージと言えるかもしれません。

街中には多くのマッサージ店がありますが、あん摩マッサージ指圧師の国家資格を保有している施術者は多くありません。

「あん摩」や「指圧」や「マッサージ」という言葉を使わなければ、同じようなことをしていても法的に罰することができないからです。

激安マッサージ店やリラクゼーションサロンなどの施術者は、ほとんどがあん摩マッサージ指圧師ではないことがほとんどです。

 

2. 柔道整復師

こちらはあまり耳なれない言葉かと思います。

よく一般の方で、「×柔道整体師」と呼び間違えてる方がいます。

 

柔道の名を冠しているのは、元々は柔道家が負傷者の治療をしていたことから職業に発展した歴史を持つためです。

「整復(せいふく)」とは、脱臼や骨折の際に骨を正常な位置に戻す技術を指します。

「ほねつぎ」とか「接骨師」というのも柔道整復師のことです。

柔道整復師の先生たちは「接骨院(せっこついん)」または「整骨院(せいこついん)」で働いています。

整骨院とは・・・?

整骨院と接骨院は、全く同じ施設の名称です。

似てはいますが、「整体院」は無資格の先生でも標榜できる名称であり、全くの別物です。

整骨院・接骨院は、柔道整復師という国家資格を持った先生が捻挫・打撲・挫傷などの急性のケガの治療を行う施設です。

また、医師の同意があれば骨折・不全骨折・脱臼も取り扱うことができます。(ただし、応急手当としての初回1日だけは医師の同意なく処置できます。)

しかし、整骨院・接骨院では病院と違いレントゲンなどで画像診断ができないので、どうしても整骨院でケガの治療を受けたい場合は、一度整形外科を受診した後に治療を整骨院で行うという流れがお勧めです。

整骨院は街なかに沢山ありますが、どのような治療をしてくれるのかは院によって全く違います。

まず、治療料金が整骨院ごとに全く違います。

整骨院というと健康保険を取り扱っていることが多いですが、完全に保険の負担額のみで治療してくれる整骨院は都内ではまれです。

保険の負担額に加えて実費の料金を請求する整骨院がほとんどで、なかには完全実費の治療院より高い治療費を設定している整骨院も現在では珍しくありません。

ですので、保険が効くから安価で済むと思っていたのに、結局は実費の料金もかさんで保険が効かない治療院と変わらない金額になることもあるのです。

そもそも、整骨院で健康保険が適応されるのは、捻挫・打撲・挫傷などの急性のケガに限られますが、明らかにケガではないものにまで健康保険を適応させてしまう整骨院も少なくありません。

本来はケガの治療を専門とするはずの整骨院の実際は、「保険が効くマッサージ屋さん」であることも珍しくないのです。

 

また、規模の大きな整骨院では、複数の先生が治療を担当するので、治療者によって大なり小なり技術差があります。

整骨院では「柔道整復師(じゅうどうせいふくし)」という国家資格を持った先生が働いていますが、鍼灸マッサージ院も併設されている場合も多いため、鍼灸師や按摩マッサージ指圧師の先生が在籍していることもあります。

さらに言えば、治療の助手という名目で無資格者や学生が施術を行っている整骨院もあるようです。

整骨院を訪れた際は是非、担当の先生に「先生は柔道整復師ですか?」と質問してみて下さい。

そうでない場合も少なくないと思います。

 

参考:特集 THE DATA
厚労省「平成30年衛生行政報告例」から読み解く未来
接骨院数の増加と療養費収入の低下が続く

 

3.はり師 4.きゅう師

 

 

最後は「はり師」と「きゅう師」です。

一般に鍼灸師と呼ばれていますが、鍼と灸は別々の資格です。

しかし、国家試験はどちらも同一の試験の中で、一部に鍼と灸の項目が分かれているだけなので、おおよその場合はどちらの免許も有している場合がほとんどです。

また、「はり師」と「きゅう師」は学校によっては「あん摩マッサージ指圧師」とセットで取得できます。

 

なぜなら、現在の国内における鍼灸治療はマッサージや手技の治療とセットで行われることが多いからです。

その為、専科の鍼灸院というのはあまり存在せず、「鍼灸整骨院」や「鍼灸整体院」「鍼灸指圧院」「鍼灸マッサージ院」などの看板を掲げていることが多く見受けられます。

 

また、「鍼灸院」を名乗っていても実際は鍼灸治療以外もそこそこの割合で行っている所もあります。

 

あまりに有名な文句で、詠み人知らずですが

 

「鍼灸治療だけで食べていくのは、芸術分野で生計を立てるくらい難しい」

 

と言われることもあります。

 

国内において、鍼灸を生涯の中で受けたことのある割合は、2~3割と言われています。

それほどに現代の日本人は鍼灸というものに対して疎いので、鍼灸だけの治療院は経営が厳しいようです。

 

しかし、鍼灸も見直されつつあるようで、大学病院でも鍼灸治療が行われ、鍼灸治療の研究も進みつつあるようです。

私は鍼灸治療を愛する鍼灸家として、日本の鍼灸の発展に微力ながら貢献できることを目指しています。

 

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